シンポジウム『体験の言語化』

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先日、早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター主催の「教えるな!揺さぶれ。公開!『体験の言語化』シンポジウム」に聴衆として参加してきました。同センターは長年学生さんたちの海外ボランティア活動(マレーシア)を企画しているそうなのですが、現地での体験を終え帰国した学生さんたちが、学内で自身の体験を言語化し他者に伝えるという段になり、なかなか充分にその体験を言語で表現できない…という困難に直面し、この3年ほど新たな取り組みとして「体験を言語化する」ことに重点を置いた特別なプログラム(全8回構成で1単位取得)を行っているとのこと。その3年間の取り組みの成果発表として、今回のシンポジウムが開かれました。

シンポジウムは二部構成で3時間にわたるものでしたが、全編You Tubeにも公開されています↓

参考になる要素がたくさんありました。特に『個人的な体験を言葉で表現する』→『その個人的な体験を通して社会的課題を見つける』というプロセスは、とても大切なことだと痛感しました。だけど今回何よりも驚いたのは、「現状、体験を言語化できない大学生が多く、そのためにはこうしたプログラムが必要だ」という、大学関係者の皆さんの前提となる問題意識でした。これは私が抜け落ちていた問題意識であり、今回のシンポジウムを通して「そうなのか…」と唸ることでもありました。もちろんこれは、何も学生さんたちに限った問題でもないと思います。自分の体験を自分自身が肯定し尊重し、言語化して初めて、他者に伝達し考えを交換できる… どんな場面でも、どんな年齢でも立場でも、とても重要なこと。だけど確かに、なかなか自然に身に付けられる力でもないのかもしれません。ちょっとした「きっかけ」が必要なのかな…。日々のなかで人それぞれに、この力を養う「きっかけ」はあるのでしょうけれど、その「きっかけ」をこうして大学がプログラムとして提供してくれるのは、今この時代だからこそなのかなと感じました。

私自身もまた一つの「きっかけ」をいただけたシンポジウムでした。上記、充分に言語化できているとは思えませんが…(汗)

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ところで、早稲田大学、実は初めて行きましたが、母校との違いに戸惑いました。緑の多いキャンパスっていいなぁ。

From Hem

思い出の曲は何ですか

お仕事で毎週通っている専門学校の、ベトナム人留学生たちからインタビューを受けた今日。私の担当ではない他の授業でインタビューの練習をしているのだそうで、彼らのインタビュー対象者になりました。テーマは「あなたの思い出の曲は何ですか」。思い出の曲…思い出の曲…と考えて、意外と思いつかないものだなぁと焦りつつ、パッと浮かんだのは、ホーチミン暮らしの間に出会った「Chênh vênh」(チェィン・ヴェィン)という歌でした。Lê Cát Trọng Lý (レ・カット・チョン・リー)という現在28歳の女性歌手が作詞作曲しています。

この曲が思い出深いのは。ホーチミンでのある日、ふらりと入ったおしゃれなブックカフェで、BGMとしてこの曲が流れていました。歌詞の意味もよくわからない、だけどとても聴き心地がよくて、歌声もメロディーも繊細で、聞いた瞬間にはもう「ああ、私これ好き」と思ったのでした。ひとめぼれ。それまでにもベトナムの歌はそれなりに聞いてきたけれど、「ああ、私これ好き」と思えるものは残念ながらあまりなくて、お気に入りの曲が欲しいなと思っていた私だったので、迷わずお店の人に声をかけ、「今流れているこの曲、何ていうの? 誰が歌ってるの?」と尋ねたのでした。教えてもらった名前をメモして、その夜はすぐにネットで検索。後日CDも購入して、帰国した今も繰り返し聴くほどに、彼女の楽曲のファンになりました。そんなエピソードがあったので、思い出深い曲となりました。出会えた、という気持ちが強かったです。

Lê Cát Trọng Lý の書く詞は非常に抒情的で、抽象的で、だから難解で、ベトナムの友人たちに歌詞の意味を尋ねても「ああ、難しいよね…なんと説明したらいいか…」といまだに誰一人、まともに教えてくれた人がいません(笑) 私がカフェで偶然出会った「Chênh vênh」も例外でなく(というよりも彼女の楽曲のなかでも最も難解らしく)、歌詞の難解さもさることながら、タイトル自体がなかなか普段は耳にしない単語で。Tratu という越越辞書を引くと、この単語はこんな風に説明されています。

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[Tính từ] ở vị trí cao mà không có chỗ dựa chắc chắn, gây cảm giác trơ trọi, thiếu vững chãi

【形容詞】 確かな拠り所のない高い位置にいて、孤独で不安定な気持ちを引き起こす。

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そう、難解なのです(笑) 現在28歳、この曲が発表された当時はおそらう23、24歳だった彼女が、このような単語をタイトルに持ってくるのが、単純にすごいなぁと思います。「浮遊」とか「孤高」とか、なんとなくそんな日本語が浮かぶのですが、まだしっくりこない。越日辞書を引いても、「ぐらぐらしている」とか「不安定な」という訳は載っていますが、やはり不十分な感じがしてしまい…。しっくりくる単語を探し始めて早くも3年くらい経過しています。こういう単語に出会う度、翻訳って、私がいかにベトナム語を知ってるか以上に、いかに日本語を知ってるかが重要だということを思い知らされます。きっとこれからも先ずっと、こういうことで悩んで日々過ごしていくのでしょう。そんなことを思い出させてくれた、今日のインタビューでした。ありがとう。

タイトルを検討するだけじゃなくて、いつかこの曲の歌詞を「勝手に翻訳シリーズ」のコーナーに掲載するのが秘かな目標だったりします。えいえい、おう。

From Hem