9/1 研修スタート~姉で妹で子どもでおばさんな私~

前日に埼玉にいる母からメッセージが届いた。「明日から2学期です」(母は教育機関に勤めています)。わかってはいたけれど、9月が始まるという事実に驚く。

と同時に、4月から毎週かかわってきた母校の研修グループがホーチミンにやって来た。朝5時にタンソン二ャット空港で出迎え。私は空港の出迎えが好きだ。待つのは疲労感もあるけれど、なんだかすごくワクワクする。空港に漂う人々の高揚感が好きなのかもしれない。待つほうも、降り立つほうも、楽しみと不安を同時に抱えている。ちなみにベトナム語では「空港に行く」というのを「Tôi đi sân bay.」ではなく「Tôi ra sân bay.」と言う。đi(ディー)=「行く」でも十分通じるが、実際にはra(ラー)=「出る」という動詞を使う。raは建物の内側から外側に出ていくときにも当然使うが、それ以外にも″その先に広がりを感じる場所に行く″ときにも使われるという(なので空港と同様にga(ガー)=「駅」やbiển(ビェ~ン)=「海」なんかに行くときにも使う、海は特にロマンを感じる)。空港は″その先の広がり″を感じるにはうってつけの場所。私がワクワクする理由もその辺にあるのかもしれないと思っている。

そして、単純に研修グループがホーチミンに到着することが嬉しかった。早く再会して、一緒にホーチミンの街を歩きたかった。研修の詳細はここでは書かないけれども、今日、東京からやって来た大学生の皆さんと行動を共にして私があらためてここで感じたことを、綴ってみようと思う。特に言葉のこと。

今日、たくさんのベトナム語に触れた。ベトナムにいるのだから当たり前なのだけれど、東京ではなかなかできることではないから嬉しくなる。自分でもびっくりするくらい、たくさんのベトナム語を発し、たくさんのベトナム語を聞いた。バスのドライバーさん、カフェの店員さん、研修メンバーが入る宿舎の大家さんたち、両替所のおばちゃん、庶民食堂の店員さん、自転車を乗りこなせない少年(危うく激突されそうだった)、などなど。それだけ多くの人とかかわる一日だったということなのだけれど、多くの人と接すれば接するほど、この地では「私」が変化する。これは精神的な意味ではなく、ベトナム語の人称代名詞の問題だ。ある人の前では私は「em」になり、また別の人の前では「chị」になる。今日は「con」にもなり「」にも、名前の「Yuki」にもなった。そして「私」(一人称)を変えるのと同様に「あなた」(二人称)も変わる。その都度相手と自分との年齢差や立場の差を考え、判断をしながら「私」と「あなた」を変える。お恥ずかしながら、未だによく間違える。「違う」と思った瞬間には口は勝手に動いていて、「chị」と言うべきところで「em」と発してしまったりする。外国人なので相手は大概大目に見てくれるし(笑われることも多いが)、私も次の文章ではすぐに訂正する。ベトナム語って人称代名詞が多いから大変だよなぁと痛感する一方、その語彙の豊かさと、相手との関係性を重んじるベトナムの人々の在り方に少し触れられたような気がして喜ぶ自分もいる。

それから、ベトナム語をやってきて本当に良かったと思うことがある。それは、相手の口調や選択する語彙の違いを知ることができ、それによって「同じ人はいない」のを実感できること。HauちゃんとHaちゃんは全然違う話し方をするし、QuynhさんとBinhさんは単語のチョイスが異なる。それは日本人だってベトナム人だって何人だって当たり前のことなのに、ふとしたときに、私はそんな当たり前のことを忘れてしまいそうになる。そんな自分がこわくなる。「日本人」や「ベトナム人」とくくってしまうことの危うさ。その人はその人でしかなく、だからこそひとりひとりが尊い存在なのだということを、私はベトナム語の勉強を通して教えてもらった。これは、この研修でも大事にしてきた、大事にしていき続けたいことだ。

ふとそんなことを考えた初日。珍しくスコールの降らない本当に暑い一日だった。たくさん歩いて汗をダラダラ流した分、カフェスアダーを何杯も飲んでしまった(でも好きだからいいのだ)。明日はいよいよ建国記念日。

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From Hem

“9/1 研修スタート~姉で妹で子どもでおばさんな私~” への4件の返信

  1. 一日お疲れさまでした。
    別の場所に「ra」。普段の生活範囲ではない、特(に)別な場所に行くときに使われるのでしょうか。おもしろいですね。
    研修前もちらりと会話の中に出てきましたが、日本語には「挨拶」がとてもたくさんあり、決して全員が同じ言葉を使っているわけではありませんが、似通っているという事実はあるのかなあと思います。そういえば、タイの市場では店に入るなり「サワディッカーサワディッカー(こんにちは=いらっしゃいませ)」と言われましたが、ホーチミンでは「Xin chao」という挨拶ではなく他のことばが使われていました。あれは何て言ってるんだろう…。

  2. コメントありがとうございます。Xin chàoよりも「Chào+二人称」が使われることが多いです。Chào anh. Chào chị. Chào em.などです。おはようもこんにちはもこんばんはもこれでOKですし、別れ際のさようならの代わりにもこの言い方が使われることもあります。Xin chàoはとても丁寧な、かしこまった、少々他人行儀な言い方のようです。

  3. Toi ra Ha Noi. Toi vao TPHCM.なんていう言い方も感覚的に不思議だなあと思います。南に向かっていくか、北に向かっていくかで言い換えるとは。
    人称代名詞では、”Em la ba noi cua anh.”という映画のタイトル。日本人にはピンとこないですね。

  4. Cảm ơn anh Sakamaki. 北に行くのと南に行くのに動詞が違うのは本当に不思議ですよね。lênとかxuốngも同じように使いますが、これは日本語の「上京する」といった言い方と感覚的に近いのかなと思ったり、でもやっぱりraとvàoは違うようなぁと思ったり。と、ここまで書いてみて、ベトナムの国土成立の歴史自体が「南進/năm tiến」であったり、分断時代に北部から南部に移住した人が多いことにも関係があるのだろうか…なんてふと思いました。Anh Sakamakiからのコメントで気になることが増えました!Em sẽ tìm hiểu. 映画のタイトルもおもしろいです、「ベトナムの怪しい彼女」の原題これだったんですね!(先日の上映は残念ながら見に行けませんでした…)

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