司法通訳技能検定を受けてきました

10月7日(土)に「2017年度・司法通訳技能検定」を受けてきました。一般社団法人日本司法通訳士連合が主催している検定試験で、接見通訳・法廷通訳を想定した内容です。複数の言語が試験対象になっているのですが、今年はベトナム語が登場しており(過去に試験対象になったこともあるそうなのですが、今年は久しぶりに再登場したようです)、ただでさえ希少なベトナム語の試験を受けてみたかったのと、私自身普段のお仕事で接見通訳にたずさわっているという関連性もあり、3・4級に初挑戦してきました。ちなみに同じ級での受験者は全言語あわせて40名ほどいて、うち7名がベトナム語でした(多さに驚きです)。

試験は、法律問題が90分、言語問題が60分、リスニング問題が60分という三部構成でした。法律問題は法律の知識を問うものでオール日本語でしたが、言語問題は法律用語や刑事事件に関する短い文章の翻訳問題で、私の場合は日本語⇔ベトナム語の双方向を行いました。リスニング問題は非常に実務的で、接見室での弁護士(日本語)と被疑者(私の場合はベトナム語)の一連のやりとりを一文ずつ交互に聞き、その場で通訳をするようなイメージで日本語はベトナム語へ、ベトナム語は日本語へと翻訳して書き取るものでした(全50問)。同じ部屋で英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語などの方々も同時受験していたため、それぞれヘッドフォンを装着して受験しました。法律の専門家ではない私にとっては最初の法律問題が本当に難しくて、なかなか正解を選べなかったように思います。翻訳問題とリスニング問題もとても簡単とは言えず、結果はどうなることやら…です。

それでも、結果にかかわらず、こうして時々ベトナム語関連の試験を受けられるのは、自分のスキルを振り返る非常に良い機会となります。そしてその度にまだまだだ…と反省することになるのですが、それをこれからのモチベーションへとつなげて、引き続き精進していけたらと思っています。

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大学で授業をさせていただきました

先日、都内の某大学にて、まもなくハノイでのインターシップへと出発する大学生3名の方々に向けて、ベトナム語の授業をやらせていただきました。このインターンシップのコーディネーターさんと以前から知り合いで、そのご縁でご紹介いただきました。

2週間のハノイ滞在中、インターンシップ先では主に日本語や英語を使用するという学生の皆さんですが、「ベトナム語がどんな言語かを知ってほしい」「たとえ通じなくても、ベトナム語を使って現地の人たちに話をしてほしい」というコーディネーターさんの願いに賛同し、授業は、①ベトナム語の基礎知識(本サイトの一項目「ベトナム語を知る10のこと」に似た内容です)、②ベトナム語の簡単な挨拶やフレーズ(こんにちは、ありがとう、また会いましょう、私は…です、など)の二部構成で行いました。わずか60分、一回限りの授業でしたので、伝えられる内容に限りはありましたが、学生の皆さんは初めて見る・聞くベトナム語に悪戦苦闘しながらも、するするとたくさん吸収してくれました。初めてとは思えないくらいに発音がお上手で、びっくり。

(写真は授業で配布したプリントの一部)

相手の国を訪問するとき、その国の言語を少しでも知ってから行く。知ることのできた内容がほんの少しでも、それらを思うように使えなくても、通じなくても、知らないよりは知っていたほうがずっといい。それは一つのマナーのようなものではないかと感じますし、そして、その姿勢というものは必ず相手にわかってもらえるものであり、相手が喜んでくれるものだと私は信じています。

学生の皆さんのインターンシップが充実したものとなるように、陰ながら願っています。コーディネーターのMさん、素敵なご縁と貴重な機会をありがとうございました!

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「法廷通訳に関する研修会」に参加しました

8月1日、日本弁護士連合会が主催する「法廷通訳に関する研修会 通訳におけるメモと記憶のメカニズム」に参加してきました。→研修会の詳細はこちら

私は現在、埼玉弁護士会と東京弁護士会に通訳人登録して、弁護士さんたちがベトナム人被疑者・被告人に接見する際の通訳をさせていただいています。法廷通訳はこの範疇ではなく、私自身も経験はありませんが、今年に入ってベトナム語通訳人の入る公判を二回ほど傍聴する機会があり、大変勉強になりました。公判の傍聴自体が初めてで、審理の過程を知識としては知っていたものの、目の当たりにすることでより明確になりました。また、日頃他の人がベトナム語の通訳をする場面に出くわせることもほとんどないため、「なるほど、こういう時はこういう言い回しや振る舞いをするとスムーズなんだ…」というのを実感し、日々の自分の通訳の在り様を振り返る大変良い機会となりました。

そんな過程を経て参加することのできた、今回の研修会。メモの取り方(ノートテイキング)に重点を置いた会でしたが、それが正確で丁寧な通訳を行うためにいかに重要であるかを学ぶことができました。なかでも印象深かったのは、法廷という特別な場所で通訳する際には「言いよどみ」(日本語で言うところの、え~と、あの~、ん~、そうですね…など)も忘れずに通訳するべきだ(メモに取るべきだ)、という講師の方からのご意見。被告人が「何を話すか」はもちろん、「どのように話すか」も同じように重要であるためです。

私は通訳としての特別な訓練を受けた経験はなく、これまで実務を行うなかで学び、反省し、経験を積み、少しずつ改善・改良し、進んでました。そのため、こうした研修会はとても貴重で、これまでの自分ができていたこと・できていなかったことを振り返り、課題を把握して今後に活かしていくことができます。自己研鑽を怠ってはいけないと気持ちを新たにする一方で、これからもいろいろな研修会に参加することができたらと願っています。

【研修会でご紹介いただいた参考文献の一部】

『よくわかる逐次通訳』東京外国語大学出版社

『法廷通訳人の倫理』松柏社

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8月1日(火)22時~『ガイアの夜明け』

先日、本当にほんの少しだけなのですが、お仕事で関わらせていただいたテレビ番組があり、まもなく放送となるため、下記にお知らせします。外国人技能実習生問題を特集したもので、そのなかにベトナム人実習生の事例も登場します。

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日時:2017年8月1日(火)夜10時~ テレビ東京

番組:日経スペシャル ガイアの夜明け「ニッポン転換のとき 第四弾 追跡!”絶望職場”の担い手たち」

概要:コンビニエンスストアや飲食店で目にする、外国人店員の姿。今後、労働人口が減少する日本では、外国人はますます重要な労働力となりつつある。外国人と国内の労働現場を結びつけるもののひとつが、「外国人技能実習制度」というシステムだ。外国人に技術を移転し、その国の経済発展を担う人材を育成する”国際貢献”が目的だが、実際には人手不足に悩む中小企業や農業、漁業といった一次産業に「労働力」を提供する役割を果たしている。しかしその現場の多くでは、違法な長時間労働や賃金の不払いといった問題が…。番組では、外国人が直面する過酷な労働現場を取材。その実態を明らかにするとともに、外国人労働者と共生を図る企業の取り組みも追った。私たちの暮らしを支えてくれる外国人労働力を生かしつつ、彼らのためにもなる「働き方」とは−−。(番組HPより)

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私も番組の全貌を知っているわけでは決してないのですが、とても興味深い内容で、少しだけでも関われたことをうれしく思いました。私自身、これまでに仕事などを通してベトナム人技能実習生問題の光と影を目の当たりにし、悶々とする気持ちを抱えてきました。今回この番組のおかげで、自分自身がこの問題についてあらためて考えるきっかけをいただいたように思います。ご興味ある方はぜひチェックしてみてください。

【参考】これまで外国人技能実習生問題を考える上で私が個人的に参考にさせていただいてきた、ジャーナリスト巣内尚子さんの二つの記事シリーズを、あわせて貼り付けておきます。ご興味ある方はぜひご参照ください。

● ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか (全6編)

● 孤立する技能実習生 (全3編)

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今日のベトナム語~ご出身はどちらですか?

 

昨日、とある通訳のお仕事がありました。詳細は書けないのですが、私は立場的には日本人の方に帯同して、一緒にベトナム人の方に会いにいきました。おふたりは初対面だったので、自己紹介から始めましたが、わりと早い段階で、日本人の方が「あなたのご出身は、ベトナムのどちらですか?」と尋ねました。実は私は、この質問が投げかけられたことがとても嬉しかったのです。主に二つの理由から。

一つは、私自身が知りたかったからです。私はベトナムの方にお会いするときに、「この人はベトナムのどこの出身なんだろう」と、とても気になります。いや、日本人でも何人でも、国籍を問わず、気になるのは私の一種のクセのようなものかもしれませんが、ベトナムの方々に特に尋ねてみたくなるのは、その発音やイントネーション、単語の地域差が、その人が口を開いた途端に顕著だからかもしれません。日本でお会いするベトナムの方は割合的に北部出身の方が多いと感じますが、それゆえ、ホーチミンでいわゆる南部弁を学習した私の発音との差が常々あり、気になってしまうのです。昨日のお相手もハキハキとした北部発音で話す方で、どこから来たのかな…と心の中で気になっていた私。ただ、通訳者という立場上、特に昨日の業務の性質上は、自分から勝手にそれを聞けずにいました。

二つ目は、私の隣にいる日本人の方が、今いる目の前の相手に関心を寄せていることが伝わってきたから。相手の出身地域がわからなくても、仕事上の話はできる状況でした。それでも、そのひとつの質問があったおかげでお相手は笑顔になり、素直にいろいろな話をしてくれました。案の定、ベトナム北部地域のご出身でした。日本人のその方とは、私はこれまで何度か一緒にお仕事をさせていただいているのですが、その過程において、通訳者である私にも、ベトナムという国や人々についてたくさん尋ねてくれる方でした。コミュニケーションの第一歩は、相手に関心を持ち、それを表現すること。そのことを久しぶりに目の当たりにできた、貴重なひとときでした。

「あなたのご出身は、ベトナムのどちらですか?」…このフレーズを私は、Quê của bạn ở đâu? (クエ・クーア・バン・オー・ダウ)と訳しました。直訳は「あなたの故郷はどちらですか?」 出身地について尋ねたいとき、ベトナム語でももちろんいくつかの表現ができるはずですが、私が現地で暮らしてきた経験から「故郷」=quê (クエ)という単語を用いるのが一般的であり、スムーズであるという印象です。このフレーズに私が少しのノスタルジーを感じてしまうのは、この「故郷」という単語を用いた感傷的な歌が、ベトナムには多いからかもしれません。

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