美しさの再構築

本サイトの「勝手に翻訳シリーズ」では趣味で翻訳したものを掲載しています。

最近こうした翻訳作業を通して再認識したこと、それは、翻訳という作業は(特に自分から作品を選んで行う翻訳は)原文に感じた美しさを別の言語で再構築することなのではないか、ということでした。少し前、インスタにも投稿していた内容ですが、あらためてここに掲載してみます。

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【そのときは彼によろしく】

nếu…〔ネウ〕もし〜なら
gặp〔ガッ〕会う
người ấy〔ングオイ〕その人
cho tôi + V〔チョートイ〕私に〜させてください
gửi〔グーイ〕送る
lời〔ローイ〕言葉
chào〔チャオ〕あいさつする
*gửi lời chào で「あいさつの言葉を送る」→「よろしく伝える」

美しい日本語が、美しいベトナム語に(その逆も然り)訳されているのを見るときほど、言語を勉強してよかったなぁと思うことはありません。ここでの「美しさ」は極めて主観的な感覚なのですが…

市川拓司著「そのときは彼によろしく」。長澤まさみさんと山田孝之さんで映画化もされましたね。私はこの「そのときは彼によろしく」という日本語タイトルの語感がとても好きだったのですが、ある日ホーチミンの書店でそのベトナム語訳(写真右)を発見したとき、ベトナム語になっても、かつて感じた「美しさ」がそのまま維持されていることに、静かに感動したのを覚えています。

直訳は「もしその人に会ったら、私からよろしくと伝えて」という感じでしょうか。訳者さんの言葉選びの素晴らしさを感じます。

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これからも自分にできることを精一杯やっていこうと思います。

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あらためて発音の話

ベトナム語は発音が難しい。

これはベトナム語を学習した人ならだれもが感じる悩みでしょう。日々のレッスン中にも発音に関するいろいろな質問をいただいて、私自身も発音の習得についてあらためて考えるところがあり、一体発音の何がどう難しいのか、この機会に整理してみたいと思いました。自分のメモ的内容なので、経験者のみなさんにとっては「もう知ってるよ~」ということかりだと思いますが、「そうなんだよな~わかるよ~」とあたたかい目でご覧いただければ幸いです。

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ベトナム語の発音には3つの要素「母音」「子音」「声調」が含まれます。「声調」は日本語にはない概念ですし、「母音」「子音」は日本語のそれとはずいぶん音が異なります。そしてベトナム語の発音が私たちを悩ませるのは、この3つの要素が1つの語の中に同時に発生するからと言えます

「終わる、終了する」を意味する kết thúc(ケットゥッ)という熟語を例に具体的に見てみましょう。これは〈結束〉という漢越語(漢字由来のベトナム語)で、二字熟語として使います。ちょうど先日、とある生徒様から「なかなか通じないんです」とご相談を受けた語でした。

kết thúc

●まずは kết をご覧ください。k=頭子音、ê=母音、t=末子音の3文字が連なって1語となり、この1語に対してdấu sắc(ザウ ザッ/鋭く上がる声調)がついている構成です。

●子音 k は後ろの母音 ê と結びついて「ケ」と読みます。ê という母音は e の上に三角帽子の記号がついていて、口をあまり開けずに発音します。最後の t は「ット」の「ト」を発する直前で止めます。これに鋭く上がる声調をつけて「ケッ(ト)」と読みます。「ケッ!何さ!」と文句を言うときの「ケッ!」と似ています。(言わない?)

●続いて thúc をご覧ください。th=頭子音、u=母音、c=末子音の3文字で1語となり、やはり鋭く上がる声調がついています。声調は計6種類ありますが、このように同じ声調が続くのは珍しいことではありません。

子音 th は後ろの母音 u と結びついて「トゥ」と読みます。子音 th が有気音(息をぶわっと吐き出して発する音)のタ行であることと、母音 u が口をぎゅっとすぼめる「ウ」であることを意識するのがポイントです。末尾の c は「ック」の「ク」と発する直前で止めるのですが、-uc がセットになると口に空気を入れて(少し頬を膨らませて)終わるという不思議ルールがあります。語全体に鋭く上がる声調をつけては「トゥッ(ク)」と読み、読み終わるときには頬を膨らんでいる格好です。

 

…と、ここまで長々と書いてみて、本投稿内に音声や動画を掲載できないのが悔やまれるのですが(何か良い方法があれば後日追加します)、「母音」「子音」「声調」の3要素が1語の中で同時発生することをイメージいただけたでしょうか。ベトナム語の発音はつまり、1つの語を読むときに同時に意識しなければならないことが多いのです。もちろん上記は一例です。母音(単母音だけで12コ)・子音(頭子音24コ、末子音8コ)・声調(6コ)にはそれぞれのルールがありますし、上記のようにこれとこれを組み合わせたときはこうなるという特殊ルールもあります。すべてのルールを頭で理解できたとしても、口で実践するのにはまた別の苦労があるでしょう。

 ですが音に対して厳密性を求めるベトナム語、これらを克服しないことには、残念ながらなかなか通じません。そして私はこの音の豊かさこそがベトナム語の美しさだとも感じています。「ルールの見える化」と「効果的な実践方法の確立」、ベトナム語学習に携わる者の端くれとして、他人事にしてはいけない重要課題だと思います。そんな決意の備忘録。

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今日のベトナム語~男の子と女の子

先日、ベトナム人の同僚と家族にまつわるあれこれを話していたときに、教えてもらった表現。

“Có nếp có tẻ”

(コー) は「ある、いる、持つ」、nếp (ネッ)または gạo nếp(ガオネッ)は「もち米」、tẻ(テー)または gạo tẻ(ガオテー) は「うるち米」を意味する単語で、直訳すると「もち米があり、うるち米もある」。

これは「息子と娘がひとりずついる」ことを表していて、その同僚いわく、ベトナム人にとっては理想とされる家族構成とのこと。con trai(コンチャーイ)「息子」や con gái(コンガーイ)「娘」という単語があるのに、あえてお米で表しちゃうのが面白い。Lさんありがとう、勉強になりました。

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昨年受けた二つの試験

昨年の振り返り。今年は新型コロナウイルスの影響で多くの試験が中止・延期されているので、昨年のうちにベトナム語関連の試験を二つ受けておけたのはよかったかな…と思い、記録しておきます。

ひとつは2019年6月に開催された実用ベトナム語技能検定試験

2級に合格することができました。試験は完全マークシート方式ですが、「語彙・文法」「リーディング」「リスニング」の3部門を通して問題量がなかなか多く、スピードが求められました。リスニング問題は1回しか聞けないのも、かなりの緊張感がありました。当日の会場ではずいぶん人が多いなぁと思いましたが、こちらの記事の記事によると、準6級~2級までで703人が参加、初年度(2016年)から倍近く増えていたとのことでびっくり。今年は6月から10月に延期されていますね。

 

もうひとつは10月に開催された司法通訳技能検定試験

この5年ほど仕事で司法通訳に携わっており、昨年は特に司法通訳養成講座も受講していたので、受験してみました。過去には3級に合格していたので、このときは2級に挑戦したのですが、お恥ずかしながら残念な結果に終わってしまいました。

試験内容としては「法律」「語学」「リスニング」の3部門があります。「法律」は日本語のみで問われる選択問題なのですが、刑法だけではなく民法の問題も多く、当然ながら専門的な内容で難しかったです。「語学」は筆記形式で、単語レベル・文章レベルで日→越または越→日の翻訳問題でした。特に文章レベルの問題は、架空の刑事事件・民事事件を題材とし、その事実内容を翻訳しなければならず、高度な専門知識が求められ苦戦してしまいました。最後の「リスニング」も筆記形式で、実際の通訳場面(このときは刑事事件における弁護士接見)が想定され、弁護士の話す日本語をベトナム語で記載し、被疑者の話すベトナム語を日本語で記載しました。音声は1回しか聞けませんでしたが、内容はそこまで複雑ではなく、実際に弁護士接見を経験した人なら解きやすかったのではないかと感じます。

ウェブサイトによれば、今年も予定どおり10月に試験は行われるようですが、私は一旦見送り。引き続き勉強や実践を重ねて精進して、来年以降にまたチャレンジできたらいいなと思っています。

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映画『ドリーミング村上春樹』

見逃していたドキュメンタリー映画『ドリーミング村上春樹』が下高井戸シネマで期間限定で上映されていたので、慌てて観に行ってきました。

村上春樹作品のデンマーク語翻訳を手がけるメッテ・ホルムさんのお話。約一時間の短い映画ながら、とても崇高なものを観てしまったような、文学翻訳の途方もなさに打ちひしがれてしまったような気持ちになりました。それでも、一文や一語に惜しみなく時間をかけ、仲間や友人と議論を重ねるメッテさんの誠実な姿に感銘を受け、勇気をもらいました。翻訳は孤独な作業だけれど、その作業を通して世界と繋がれる。どんな分野の翻訳でも、原文への敬意を忘れずに、私も、できることをやろう。とりあえず『風の歌を聴け』また読まなきゃ。

下高井戸シネマでは今週2/7㈮までの上映だそうです。パンフレット買ったのいつぶりだろう。素敵な情報を教えてくれた @teng_mo21 さん、本当にありがとう!

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