あらためて発音の話

ベトナム語は発音が難しい。

これはベトナム語を学習した人ならだれもが感じる悩みでしょう。日々のレッスン中にも発音に関するいろいろな質問をいただいて、私自身も発音の習得についてあらためて考えるところがあり、一体発音の何がどう難しいのか、この機会に整理してみたいと思いました。自分のメモ的内容なので、経験者のみなさんにとっては「もう知ってるよ~」ということかりだと思いますが、「そうなんだよな~わかるよ~」とあたたかい目でご覧いただければ幸いです。

*****

ベトナム語の発音には3つの要素「母音」「子音」「声調」が含まれます。「声調」は日本語にはない概念ですし、「母音」「子音」は日本語のそれとはずいぶん音が異なります。そしてベトナム語の発音が私たちを悩ませるのは、この3つの要素が1つの語の中に同時に発生するからと言えます

「終わる、終了する」を意味する kết thúc(ケットゥッ)という熟語を例に具体的に見てみましょう。これは〈結束〉という漢越語(漢字由来のベトナム語)で、二字熟語として使います。ちょうど先日、とある生徒様から「なかなか通じないんです」とご相談を受けた語でした。

kết thúc

●まずは kết をご覧ください。k=頭子音、ê=母音、t=末子音の3文字が連なって1語となり、この1語に対してdấu sắc(ザウ ザッ/鋭く上がる声調)がついている構成です。

●子音 k は後ろの母音 ê と結びついて「ケ」と読みます。ê という母音は e の上に三角帽子の記号がついていて、口をあまり開けずに発音します。最後の t は「ット」の「ト」を発する直前で止めます。これに鋭く上がる声調をつけて「ケッ(ト)」と読みます。「ケッ!何さ!」と文句を言うときの「ケッ!」と似ています。(言わない?)

●続いて thúc をご覧ください。th=頭子音、u=母音、c=末子音の3文字で1語となり、やはり鋭く上がる声調がついています。声調は計6種類ありますが、このように同じ声調が続くのは珍しいことではありません。

子音 th は後ろの母音 u と結びついて「トゥ」と読みます。子音 th が有気音(息をぶわっと吐き出して発する音)のタ行であることと、母音 u が口をぎゅっとすぼめる「ウ」であることを意識するのがポイントです。末尾の c は「ック」の「ク」と発する直前で止めるのですが、-uc がセットになると口に空気を入れて(少し頬を膨らませて)終わるという不思議ルールがあります。語全体に鋭く上がる声調をつけては「トゥッ(ク)」と読み、読み終わるときには頬を膨らんでいる格好です。

 

…と、ここまで長々と書いてみて、本投稿内に音声や動画を掲載できないのが悔やまれるのですが(何か良い方法があれば後日追加します)、「母音」「子音」「声調」の3要素が1語の中で同時発生することをイメージいただけたでしょうか。ベトナム語の発音はつまり、1つの語を読むときに同時に意識しなければならないことが多いのです。もちろん上記は一例です。母音(単母音だけで12コ)・子音(頭子音24コ、末子音8コ)・声調(6コ)にはそれぞれのルールがありますし、上記のようにこれとこれを組み合わせたときはこうなるという特殊ルールもあります。すべてのルールを頭で理解できたとしても、口で実践するのにはまた別の苦労があるでしょう。

 ですが音に対して厳密性を求めるベトナム語、これらを克服しないことには、残念ながらなかなか通じません。そして私はこの音の豊かさこそがベトナム語の美しさだとも感じています。「ルールの見える化」と「効果的な実践方法の確立」、ベトナム語学習に携わる者の端くれとして、他人事にしてはいけない重要課題だと思います。そんな決意の備忘録。

From Hem

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください