前回の投稿で、Giữ xe miễn phí(バイクを無料で預かります)という表現に触れました。今回は、駐車場以外の場所で見かけた、さまざまな miễn phí(無料)を紹介します。

まずはこちら。ホーチミン市レヴァンタム公園(Công viên Lê Văn Tám)で開かれていた、ブックフェアに遊びに行ったときのこと。さまざまな書店や出版社の展示ブースが所狭しと並ぶなか、ふと公園の隅に目をやると、こんな給水所がありました。

Nước uống miễn phí!「飲み水、無料!」
● nước:水
● uống:飲む
● miễn phí:【免費】無料
uống nước は動詞句で「水を飲む」ですが、nước uống だと名詞句で「飲み水」となります。暑い気候のなかでの野外イベントだったので、こうした配慮があったのかなと思います。
飲み物つながりで、次はこちら。メコンデルタ最大の都市カントー(Cần Thơ)を旅したときに、街中で見かけたものです。

TRÀ ĐÁ MIỄN PHÍ「冷たいお茶、無料」
● trà:お茶
● đá:氷
自治体が置いたものなのか、はたまた近くのお店の人が置いたものなのか、そのあたりのことはわかりませんでしたが、やはり暑い土地での、道行く人へのやさしい気配りだと思いました。
最後はこちら。ホーチミン市1区(当時)タイヴァンルン通り(Đường Thái Văn Lưng)の、とある年季の入った集合住宅。中には、ランチ時に賑わう庶民的な食堂や、お洒落で落ち着きのあるカフェなどが入っていて、私も好きで通っていたのですが、ある時、その1階入り口付近に、こんなボックスが掲げられていました。

Miễn phí 1 người 1 ổ「無料 一人一つ」
● người:人
● ổ:類別詞(パンに使う)
バインミー!と驚きつつ、ここでは何といっても、類別詞 ổ に注目したいです。
名詞を特定したり、助数詞としても活躍するベトナム語の「類別詞」ですが、その数はとても多く、また分類方法も日本語の感覚とは異なるため、「これは一体何に付く類別詞だろう?」と疑問が浮かぶこともしばしば。そんなとき、私が参照しているのは、Ngô Quang Vinh『現代ベトナム語の類別詞研究 類別詞の本質とその意味・用法』です。
こちらによると、今回の ổ は「(ベトナム風の)フランスパンを特定する」とあり、例文として「một ổ bánh mì(一本のフランスパン)」と紹介されています。ちなみに『詳解ベトナム語辞典』には「〔パンの類称〕ổ bánh mì(一塊の)パン」、『五味版学習者用ベトナム語辞典』には「フランスパンなどに付される」とあり、やはり bánh mì の例文が続きます。
あくまで私の経験では、ですが、「パン」と言っても、ổ がバインミー(ここではベトナム風フランスパンのこと)以外の他のパンに付いているのを見たことがありません。なぜバインミーだけなのか?という疑問が浮かびますが、ổ の名詞としての意味、「巣、ねぐら」「巣窟」が関係しているのかなと想像しています(バインミーは中が空洞で、一塊の巣っぽい?)。つくづく、バインミーはベトナムにとって特別なパンなのではないかと、一つの看板から別の方向に意識が向きました。
ところで、先の「バインミーボックス」は誰がどんな意図で設置したものなのか、二枚目の写真同様、こちらも確認を怠り、謎のまま。近くの人に聞けば良かったと、当時の自分の消極性が悔やまれます。何か疑問が浮かんだら、鮮度のいいうちに解消または記録しておこう。私の、今年の小さな目標です。
☆参考資料
私は書籍として手元に置いていますが、博士論文として、以下から読むこともできます。
