正確な場所は忘れてしまったのですが、写真は、ホーチミン市のとあるローカル団地内に掲げられた標語を写したものです。最近この写真を見返していて、ふと sống còn ってどういう意味だったっけ?と調べてみたら、なかなか解釈に迷うものでした。
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tiết kiệm : 倹約する、節約する
A là B : AはBである
giải pháp : 解決策
sống còn : ?
A của B : BのA
chúng ta : 私たち、我々
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問題の “sống còn” についてですが… sống(住む、生きる)も còn(まだ~である)も単独ではとても身近な単語なのに、この順番で組み合わさると途端に謎めいて見えるから不思議です。
越越辞書によると、”có tính chất quan trọng quyết định đối với sự sống, sự tồn tại”(生命、存在を決定づける重要な性質を持つ)という意味の形容詞とあります。一方で越英辞書には “vital” とあります。今度は英和辞書で調べてみると、『①命の、生命に関する ②生命維持に必要な、延命させる ③元気な、生き生きした ④元気づける、生き生きさせる ⑤(存在に)必須な、不可欠の ⑥極めて重要な ⑦致命的な、死を招く ⑧《生物》生体の』とあります。
これらを総合的に見て、ここでは「(存在に)必須な、不可欠の」という意味なのかなと思い至りました。すなわち看板の一文を直訳すると「倹約は、我々の不可欠な解決策である」。
しかしこれはかなりカタイ日本語です。標語らしいすっきりとした言い回しはないものかと、Instagramで同様の内容を投稿したところ、フォロワーさんたちから訳語についていくつかの素敵な提案をいただきました。敬意を表して、下にも記載させていただきます。
「倹約は我々の生きる術だ」
「倹約こそ我々が生き延びる術だ」
「倹約は私たちの生命だ」
sống còn を「生きる」や「生き延びる」、giải pháp を「術」と訳すのは素晴らしいと思いました。そしてこれら二つを合わせて「生命」と訳す思い切りの良さが私にはなかったので、とても参考になりました。Cảm ơn chị Hirono và em Ngọc!
意味が掴めてくると、今度はこの標語の由来や背景、団地に掲げられた経緯も気になり。物が少なかった時代の名残か、豊かになった現在への戒めか。そもそも誰かの発した有名な台詞なのか…などなど、興味は尽きません。看板ひとつから学びは広がっていきます。
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